圧倒される巨石の数々。見上げた先に、太古の気配が漂います。

やわらかな日差しに、山の緑がいっそう鮮やかに映る4月。大和町の山あいにある「巨石パーク」を訪れると、自然が造り出した圧倒的な景色に出会えます。登山道を進むと、突如として現れるのは、高さ10メートルを超える巨大な石の数々。何百年、何千年も前からこの場所に鎮座し、私たちを見守ってきたかのような佇まいに、思わず足が止まります。
ここにある巨石の多くは、古くからの神様が宿る特別なものとして大切にされてきました。石神様が航海に使った「御舟石」や、いろんなものがこの石から生まれたとされる「誕生石」など、17基もの巨石にはそれぞれ伝説が残っているそうです。かつて人々がこの山を訪れ、大きな石を神様と仰いで日々の安らぎを祈った歴史が、今も静かに息づいています。
一歩森の中へ足を踏み入れれば、そこは日常の喧騒をわすれる別世界。鳥のさえずりが響き、春風が木々を揺らす音に耳を澄ませながら歩く道は、心身をリフレッシュさせてくれる特別な時間です。
わざわざ遠くへ行かなくても、車を少しは知らせれば、太古のロマンを感じられる森がある。これもまた、豊かな自然と暮らしが隣り合わせにある佐賀市ならではの風景です。芽吹いたばかりの若葉と、どっしりと構える巨石たちが、私たちの日常に自然のパワーを届けてくれます。
林陽子(地域おこし協力隊)

気づけば時間を忘れて歩き続けてしまう——そんな体験ができる場所が、巨石パークです。この場所に惹かれ、やがて暮らしの場所まで変えることになったのが、地域おこし協力隊の林陽子(はやしようこ)さんです。

林さんが巨石パークを訪れたのは、着任1年目の9月。東京に家族を残し、単身で佐賀に来ていた頃のことでした。登山イベントに向けた下見として、一人で山を登ったのがはじまりでした。巨石パーク近くの飲食店で手に取った一冊の本『巨石パークの奇跡』をきっかけに、思いがけない出会いが生まれます。本を購入しようと筆者に電話をかけますが、つながらず、そのまま山へ。夢中で巨石を巡り、下山したときにはあたりは薄暗くなっていました。すると管理棟で「本、届いていますよ」と声をかけられます。筆者がわざわざ本を届けてくださっていたといいます。本にはお礼の言葉とサイン。この出来事をきっかけに、今も交流が続いています。

初めて見た巨石の風景に、林さんは「人智を超えた力強さを感じた」と話します。なぜここにあるのか——その不思議さにワクワクしたといいます。特に印象に残るのが「天の岩門」。撮影した写真に光が映り込んだことに驚いたそうです。その体験を家族に伝えると「行ってみたい」と話が広がり、後日一緒に訪れることに。こうした出来事の積み重ねが、家族での佐賀市への移住へとつながっていきました。

移住にあたっては車の免許がなく不安もあったそうですが、実際に暮らしてみて感じるのは、日常の中にある豊かさです。美味しい水や自然、満点の星空。都会では当たり前ではないことが、ここには当たり前にあります。
インタビュー後、林さんが好きだという「天の岩門」へ案内してもらいました。想像以上に本格的な山道を進み、植物や生き物の気配に癒されながら歩きます。たどり着いた巨石は圧倒的な存在感で、なぜここにあるのかと不思議に感じます。林さんが語っていた感覚を、少しだけ体感した時間でした。
巨石との出会いから始まった佐賀での暮らし。少し足を止めることで見えてくる風景。その中に、佐賀の魅力は静かに広がっています。