空と田んぼと、どこまでも続く道。走るほどに、気持ちまでのびやかになります。

日中の空気にやわらかさを感じる3月。外に出ると、自然と体を動かしたくなる季節です。佐賀市は、のんびりとした平野が広がるまち。坂道があまりなく、どこまでも続く道が、移動そのものを気持ちのいい時間にしてくれます。 そんな地形を生かして親しまれているのがサイクリング。中でも旧国鉄・佐賀線の跡地を整備した徐福サイクルロードは1991年に廃止された線路跡が、現在は総延長約5キロの歩行者・自転車専用道路として生まれ変わり、通勤や通学、散歩や運動など、さまざまな場面で使われています。春には道沿いの桜並木がいっせいに咲き、まるで桜のトンネルのような風景を走ることができます。 佐賀市がこれほど平らなのは、かつて海や干潟だった土地を開拓してきた歴史があるから。高い建物が少なく、空と田んぼの風景が遠くまで広がる平野のまちだからこそ、気軽にサイクリングが楽しめます。ペダルをこぎながら、この豊かさをあらためて感じてみませんか。
服部二朗(みなくるSAGA理事長)

車ならあっという間に通り過ぎてしまう道も、自転車で走ると見える景色が変わってきます。水路沿いで揺れる草花、季節ごとに表情を変える木々、ふと立ち寄りたくなる店先。そんな佐賀の楽しみ方を伝えているのが、「みなくるSAGA」理事長の服部二朗(はっとりじろう)さんです。服部さんが自転車に親しむようになったのは、県庁に勤めていた頃です。健康を意識したことをきっかけに、小城市から佐賀市まで往復25キロの自転車通勤を続けてきました。その経験の中で、自転車は単なる移動手段ではなく、日々の景色や空気の心地よさを感じさせてくれる存在だと実感したそうです。

服部さんが理事長を務める「みなくるSAGA」では、サイクルラックの整備など、自転車でまちを楽しむ環境づくりにも関わってきました。ただ、服部さんは「設備を整えるだけでは十分ではない」と話します。自転車の魅力は、走る途中で立ち止まり、景色を眺めたり、店に寄ったりしながら、まちの空気をゆっくり味わえることにあります。草花や水の流れ、生き物の気配など、まちの中にある小さな風景に出会えるのも、自転車ならではの楽しさです。

特に佐賀では、水辺の存在が大きいと服部さんは言います。クリークや川、有明海の干満によって変化する風景など、水のある景色がまちのあちこちに広がっています。そうした風景を感じながら、自分のペースで巡ることができるのが自転車の魅力です。決められたコースをきっちり巡るよりも、「ふらっと」走って気になった場所に立ち寄る楽しみ方が、佐賀にはよく合うと言います。

服部さんにとって自転車とは、体と気持ちを自由にしてくれる大切な存在です。歩くより遠くへ行くことができ、車よりもまちを近くに感じることができます。少し時間をとって走るだけで、見える景色や感じる時間が変わってくるそうです。服部さんは、まずは自転車で走って佐賀を体感してほしいと話します。平らな道の先に広がる空、水辺の風景、そして寄り道の楽しさ。自転車で巡ることで、佐賀の何気ない日常が、ぐっと魅力的に見えてきます。