足を延ばせばすぐいける距離に、ほっと心を癒してくれる温泉地があるぜいたく。

窓際に設置された、白と黒の市松模様のタイルが縁取られた屋内プールの水面が静かに波立っており、曇りガラスの窓から差し込む柔らかな光が青いタイル張りの水底までを淡く照らしている写真

佐賀市富士町には、「ふるくま」と呼ばれる、昔から親しまれてきた古湯・熊の川温泉があります。買い物の帰りに立ち寄ったり、仕事終わりにその日の疲れを流しに行ったり。週末に家族で出かけて、湯上がりにコーヒー牛乳を飲みながら笑い合ったり。そんな何気ない日常の中に「ふるくま」はそっと寄り添ってくれています。体温に近いぬるめのお湯が特徴で、ぬるっとした肌触りのいい泉質であることから、「ぬる湯」の愛称で親しまれています。ゆっくりと時間をかけて、体の芯まで温めてくれるぬる湯は、日々の疲れをじっくりと癒やしてくれます。施設によっては温泉水を持ち帰ることもでき、お料理に使ったり自宅のお風呂に入れたりと気軽にふるくまのお湯を楽しむ事ができるのも魅力です。温泉だけではなく、足湯や食堂、地元野菜の無人販売所などもあり、ひっそりとした街並みの中に昔ながらの温かさが宿っています。客室や大広間が完備されている施設も多く、一日時間に追われずにまったりと過ごすのもおすすめ。遠くへ出かけなくても、足を伸ばせばすぐ行ける距離に、のんびりとした温泉地があるということは、ちょっと豊かな、佐賀市の一面です。

村岡夏子さん(古湯・熊の川温泉観光コンベンション連盟)

明るいベージュのブラウスを着用した茶髪のショートヘアの村岡夏子さんが穏やかな表情で微笑んでおり、背景にはアニメ風のキャラクターパネルや案内標識、棚が並ぶ室内が映り込んでいる写真

山々が近く、澄んだ空気と自然の豊かさを感じられる、富士町古湯。

石畳の風情ある通りの傍の観光案内所で、にこやかな笑顔で訪れる人を迎える村岡夏子(むらおかなつこ)さん。古湯・熊の川温泉観光コンベンション連盟のスタッフとして、温泉街を見守りながら、その魅力を多くの人に伝えています。

「静かでのんびりしててぬるーい温泉にゆったりと入れることが魅力ですね」と村岡さん。「ふるくま」と呼ばれるこの温泉街では、いくつもの温泉を巡るのではなく、一つのお湯にじっくりと浸かり、心身を癒すのが流儀。県外からのお客様も多く、取材当日も、久留米市から訪れたお客様に、笑顔で丁寧に温泉の案内をする村岡さんの姿は、まさに古湯の温かい空気を体現しているようでした。

観光案内所のカウンターで、ベージュのブラウスを着た女性が黄色のTシャツを着用した男性に地図を広げて指し示しながら案内をしており、背景の棚にはパンフレットや温泉の看板が並んでいる、接客中の様子を捉えた写真
木目調のテーブルの上に置かれた、青い釉薬が施された平皿に、ゴツゴツとした茶褐色の溶岩石を鉢に見立てて青々とした苔と小さな葉を持つ植物を植えたミニ盆栽が飾られている写真

入浴後にわざわざ「よかったよお~」と伝えに来てくれる人がいたり、お礼のお手紙が届くことも、村岡さんにとって大きな喜び。最近の趣味は旅行で、様々な観光地を巡り、そこで学んだ接客術やPRのポイントを、「ふるくま」の案内に活かしています。その姿勢が、村岡さんの素晴らしい接客の秘訣なのかもしれません。

近くにある宿泊交流施設「SAGA FURUYU CAMP」にサテライト観光案内所を作る予定とのことで、地元の人も集い交流できるカフェとお土産スペースを作るための準備に奔走中。「苔テラリウム」づくりなどのワークショップも考えられており、実際に村岡さんが作った作品も見せていただきました。作業を行いながら、参加者同士の会話が弾み、親睦が深まるそうです。

山あいの曇り空の下、ベージュの外壁と黒い屋根を持つ平屋建ての「古湯・富士観光案内所」の外観が映し出されており、建物の前には案内所と温泉スタンドを示す茶色の看板が設置されている施設写真

「入ってみないとわからない、ぬる湯の心地よさを、ぜひ体験してください」と村岡さん。 夏場でも心地よい温度が魅力の「ふるくま」の温泉。8月には花火大会も予定されているとのこと。「ふるくま」の心地よい静けさと温もり、そして村岡さんの優しい笑顔に癒されたい方は、ぜひ観光案内所を訪れてみてください。きっと、また来たくなるはず。「ふるくま」でお待ちしています。

納富幸江さん(富士町在住)

オレンジ色のカットソーとボーダーの長袖を重ね着した眼鏡をかける年配の女性が、胸の前で両手を組みながら楽しそうに満面の笑みを浮かべており、背景には木製の棚と温泉のイラストが映っている写真

富士町古湯に生まれて育ち、70年以上を過ごしてきた納富幸江(のうどみゆきえ)さん。 古湯での生活に欠かせないもの、それは何よりも「温泉」。 定休日や用事のある日を除き、ほぼ毎日、すぐ近くの英龍温泉に通い、同じ時間帯に通うお仲間と、温かい湯船の中で1時間ほど談笑するそうです。日常生活に溶け込んだ温泉が、地域の人々の交流の場として機能している様子は、古湯の温かい人情を感じさせます。

「古湯の温泉は、入った人がみんな『ここが一番良い。よく眠れる』って言うのよ」と納富さん。温泉の恵みによって心身が癒され、ぐっすり眠れる日々。そのおかげか、納富さんは料理教室など日々様々なことに精力的に取り組んでいます。

屋外の蛇口から伸びる青いホースから、透明な大きなペットボトルに水が注がれており、その傍らには「入浴されたおとなの方一名付10ℓリットル料です」と書かれた手書きの案内札が吊り下げられている、温泉スタンドでの給水の様子を捉えた写真

温泉の効能は、入浴だけにとどまりません。納富さんは、温泉水でお茶やコーヒーを淹れたり、お米を炊いたり、料理にも使ったりしているそうです。「温泉水で入れたコーヒーは、まろやかで格別においしいのよ」と、少し自慢げに教えてくれました。なんという贅沢。

曇り空の下に立つ、コンクリート打ち放しの無機質な外観を持つ三階建ての「英龍温泉」の建物が映し出されており、一階の軒下には緑色のコンテナや段ボール箱が積み上げられ、傍らには白いワゴン車が停まっている、温泉施設の全景写真

一緒に英龍温泉に向かうと、偶然にもいつも一緒に温泉に入る仲間の方にお会いすることができました。すぐに会話に花が咲き、また夕方にねと、楽しそうに談笑する納富さんの姿は、古湯の温かいコミュニティを象徴しているようでした。お店の方とも顔なじみで、古湯の温泉街の“近さ”を感じます。

納富さんの言葉、温泉で出会った人々の笑顔は、古湯の生活の豊かさ、そして人々の温かさを物語っています。古湯の温泉は、単なる観光資源ではなく、これまでもこれからも、人々の生活に寄り添い、地域を繋ぐ大切な存在です。

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