

冬の澄んだ空気の中、ゆっくりと潮が満ち引きする有明海の干潟。初日の出を見に東よか干潟に訪れた人も多いのではないでしょうか。佐賀市に暮らす私たちにとって、干潟は日常のそばにある大切な景色。家族や友人と一緒に見た夕焼けや、潮の香り、足元で小さく跳ねる生き物の気配。そのすべてが、今も心に残る原風景です。
広大な干潟には、有明海ならではの珍しい生き物たちが多く息づいています。秋になると、海辺一面に赤く色づく「海の紅葉」シチメンソウの群生地が広がり、春の初めごろまでは、シギやチドリなどの渡り鳥が多くやってきます。そんな表情豊かな有明海の干潟は国際的にも重要な湿地としてラムサール条約に登録され、多くの人の手によって守られています。近くの小中学校では干潟に関する授業が行われ、こどもの頃から世界的にも珍しい地域資源について学びます。ジュニアガイドの育成など、この原風景を未来へつなぐ取り組みも続いています。
潮の満ち引きとともに、姿を変える干潟。日の出の静けさ、秋の紅葉、渡り鳥の羽ばたき。それらは、私たちのまちの日常にある豊かさです。今年もまた、海岸から望む干潟の景色に思いを馳せながら、ゆっくりと新しい1年が始まります。
|
|
日本一の干満差を誇る有明海。干潮時には、見渡す限りの広大な干潟がその姿を現します。東よか干潟では、ムツゴロウなど、この土地ならではの生き物を見ることができます。晩秋には、海沿いを真っ赤に染め上げるシチメンソウも見どころで、11月の初めに開催される「シチメンソウまつり」は、多くの観光客で賑わいます。このまつりの際、地元のこどもたちが観光客に自分たちの生まれ育った土地の魅力を伝えていることをご存じでしょうか。 |
|
東与賀公民館の「観光ジュニアガイド養成教室」には、地元の小中学校のこどもたちが参加しています。「友達がやっているのを見て面白そうだと思った」「生きものが好きで、いろいろな人に知ってもらいたい」といった思いを胸に、ガイドを目指しています。こどもたちが手作りしたガイドブックには、有明海の干潟で暮らす生き物たちのイラストや特徴が詳しく描かれており、見ているだけでこの場所に対する愛情が伝わってきます。 |
|
|
|
こどもたちに東よか干潟の思い出を尋ねると、「家族で昔から日の出を見ていた」「幼稚園でスケッチした」「小学校のクラブ活動で干潟の鳥について調べた」といったエピソードが次々と飛び出しました。幼いころから、干潟が身近にあり、触れ合う機会も多かったことが今の活動にもつながっているようです。 |
|
せっかくの機会なので、シチメンソウが生えている場所をガイドしてもらいました。現地でおすすめのスポットを尋ねると、干潮で海が引いた後に水たまりのように残った海水の中でトビハゼが跳ねている様子がとても面白いとのこと。さらに、泥の中にある無数の穴は生き物の隠れ家で、トビハゼやシオマネキが住んでいるといった具合に、話は尽きることがありません。紅葉したシチメンソウは11月上旬が見ごろですが、それ以外の時期にも様々な生き物や美しい海の景色が楽しめます。ぜひ一度、東よか干潟に遊びに来てみてはいかがでしょうか。 |
![]() |
|
|
|
|
東よか干潟がラムサール条約登録湿地となったことをきっかけに始まった「シギの恩返し米」。このプロジェクトには、豊かで美しい東与賀の自然と生きもの、そして人々がいつまでも共生していこうという願いが込められています。今回はシギの恩返し米生産部会の部会長を務める内田武士(うちだたけし)さんにお話を伺いました。 |
|
もともと東与賀地区での米作りのうち、「夢しずく」という品種では通常の方法と比べて50%以上の農薬を減らした栽培方法を採用していました。環境面では素晴らしい取り組みですが、当初はお米の収穫量が少ないことなどから、一時は減農薬を続けるかどうか悩みながら、なんとか続けてきたと内田さんは振り返ります。そんな中でラムサール条約の登録があり、湿地の恵みを守りながら生産農家の課題解決につなげるためにブランド米の立ち上げを志したとのことです。現在では、化学農薬の成分使用回数を70%から100%削減し、おいしいお米ができています。 |
|
|
|
「キトサンです。キトサン」内田さんが熱っぽく話します。化学農薬を減らしていくうえで活躍したのがカニやエビからとれる天然の生物資源(バイオマス)です。殺菌効果があるだけでなく、虫に対する忌避効果があり、害虫被害も防げるそうです。内田さんは「農業は自然に一番左右されるものなので、環境を大切にしたい」と力強く語ります。 |
|
この日、佐賀市の東与賀小学校では給食にシギの恩返し米が提供され、東与賀の自然の生態系や環境に優しい農法についての講話も行われました。講話の後には、内田さんとともに来た生産者がシギのかぶり物やハッピを身に着け、こどもたちと楽しそうに交流しました。「こどもたちに自分たちの作ったお米を食べてもらうことは、とても嬉しいことです。美味しいと感じてくれることで、次世代に繋がっていくと信じています」と語る内田さんの目には、未来への希望が宿っています。 |
![]() |
|
|