佐賀ラーメンは生卵トッピング。毎日いけるマイルド豚骨。

生卵溶け出すなめらかスープにやわらかめの麺。このまちならではの優しい一杯。

吐く息が白くなる12月、あたたかい湯気の立つラーメンが恋しくなります。佐賀ラーメンと言えば、まず目を引くのがスープに浮かぶ生卵。箸先でそっと崩すと黄身がとろりと広がり、まろやかでやさしい味わいが広がります。豚骨の香りに包まれながら、スープをすくうたびに体の芯まで温まる。寒い季節にぴったりの一杯です。

佐賀ラーメンのルーツは、豚骨ラーメンの発祥地・久留米。偶然の失敗から生まれた白濁スープの技法が佐賀へと伝わり、地元の職人が自分たちの味を求めて試行錯誤を重ねました。こうして1950年代半ばには、佐賀独自の一杯が形づくられていきます。濃厚ながらもやさしい口あたりのスープ。やわらかめの麺、そして仕上げにのせる生卵や海苔。それらの組み合わせが、佐賀ならではのラーメンを生み出しました。

一口に佐賀ラーメンといっても、お店によって個性はさまざま。濃厚でコクを極めた一杯や昔ながらのあっさりとした味を守る一杯。トッピングやスープの濃度、麺の茹で加減まで、どれも「この味が好き」と語りたくなる、私たちそれぞれの思い出の一杯です。

寒さが深まるこれからの季節、湯気の向こうに広がるやさしい味わいを求めて、まちをあるくのもいいかもしれません。

時吉 学(一休軒 呉服元町店 代表)

 

佐賀ならではの進化を遂げた佐賀ラーメン。マイルドな豚骨スープに、やや太めのストレート麺が特徴的で、柔らかな食感が楽しめます。生卵や佐賀のりのトッピングが加わることで、他にはない独自の風味を生み出しています。老舗佐賀ラーメン「一休軒」の流れを汲む「呉服元町店」の代表、時吉学(ときよしまなぶ)さんにお話を伺いました。

時吉さんは福井県出身ですが、ラーメンへの情熱が高じて福岡のラーメン店で修業をスタートしました。佐賀に移住した後も、「やはりラーメン店を開きたい」という強い想いから、知り合いに紹介されて一休軒で修行をすることになったそうです。当初は佐賀ラーメンのスープ作りに苦戦。「今では自信を持って提供していますが、当時は毎日のスープに味のバラつきが出てしまい、なかなか安定しないことが多かったです」と振り返ります。時吉さんの苦労が、マイルドな豚骨スープの背後にあることが窺えます。

 

「食べた人が『おいしい』と言ってくれる声や、スープまで飲み干してくれる姿を見ると嬉しい」と、時吉さんは笑顔で話します。今もラーメン作りの改良に余念がないそうで、当初は「取りきり」というスープを継ぎ足さない手法を採用していましたが、現在では「呼び戻し」という手法を取り入れています。古いスープに新しいスープと豚骨を少しずつ足していくことで、味を安定させるのは難しいものの、大切な食材を有効活用するためにこの方法を選んだそうです。「今に満足せず、より美味しい味を追求していきたい」という時吉さんのラーメンへの情熱が、その言葉から溢れています。

お昼時には大勢のお客さんが来店する「一休軒 呉服元町店」。近所の方だけでなく、最近では県外から訪れる方も多く、取材日に訪れた際には熊本や大分からのお客さんもいらっしゃったそうです。「実は12月限定のラーメンを毎年販売しているんですよ」その内容を尋ねると、今年はなんと鶏白湯の『鶏しおラーメン』とのこと。佐賀県産の鶏ガラと丸鶏を使用した濃厚スープで、時吉さんならではの挑戦が感じられます。期間限定の味を楽しみに、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。