
暑さのピークを過ぎ、少しだけ秋の気配がただよい始める9月。商店街や駅には、カラフルなユニフォームに身を包んだ選手たちを映すポスターが。佐賀市には、全国で活躍するプロスポーツチームと、その熱戦を間近で楽しめる場所があります。
SAGAアリーナは、2023年5月にオープンした九州最大級の多目的アリーナ。駅からほど近く、プロの試合はもちろん、人気アーティストのコンサートや国際的な会議まで、多彩なイベントが開催されています。
わざわざ遠くへ行かなくても、すぐ近くで本格的な試合が楽しめる。スーツのまま、制服のまま、自転車に乗って会場へ向かう人たちの姿も見かけます。照明の下で交わる声、靴が擦れる音、大迫力のハングビジョン。応援の声がひとつになり、気付けば隣の人とハイタッチして笑いあったり。誰かと気持ちを共有する楽しさに魅了されて、スポーツ観戦が暮らしの一部になっている人も。
10月からはいよいよプロバスケやバレーの新シーズン。今年もまた、まちにスポーツの熱が灯る季節がやってきます。静かな夕暮れの先にある非日常感が、私たちの生活を少し特別なものに変えてくれます。
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SAGAアリーナに響き渡る熱狂的な応援、白熱した試合展開…プロバスケットボールの新シーズンが10月に始まります! その熱気の裏側で、選手やファンを支える人たちがいます。今回は、佐賀バルーナーズのボランティア「BalloonTeer」の藤木勝利(ふじきまさとし)さんに、アリーナでの活動についてお話を伺いました。 |
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スポーツ観戦が趣味で、サガン鳥栖やソフトバンクホークスなど様々なプロスポーツチームを応援してきた藤木さん。佐賀バルーナーズの試合を観戦した際、困っているお客様への運営スタッフの迅速な対応や温かい歓迎に感銘を受けました。 お客様一人ひとりに試合を楽しんでもらおうとする「おもてなし」の姿勢に心を打たれましたが、同時に運営側だけでは対応しきれない部分もあることに気づきました。 そこで「ブースターの皆さんに気持ちよく試合を楽しんでほしい」という思いから、BalloonTeerとして活動を始めたそうです。 |
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SAGAアリーナでの活動は多岐に渡ります。チケットの確認、席へのご案内、アリーナ入り口での温かい声かけ、試合中のゴミ回収、そして試合後の撤収作業など、まさに縁の下の力持ちです。「初めて来たお客様に対してウェルカム感がないと残念でもったいないです」と語る藤木さん。活動のやりがいをお尋ねするとブースターの方との会話のキャッチボールが1番で、常連の人から「よろしく」、「今日もまたありがとうございました」と声掛けしてもらえることがとてもうれしいと、にこやかに話してくれました。 試合を配信でしか観たことがなく、SAGAアリーナでの観戦は未経験ですと話すと、「グッズやユニフォームが無いと、尻込みしちゃうかもしれないけど、ぜんぜん問題ないので、ぜひ来てほしい」と話し、配信だけでは楽しむことができない演出やグルメ情報を教えてくれました。こんな声かけが新しいファンを増やしていくのかもしれません。 |
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熱意あふれる応援と、選手やお客様たちへの惜しみないサポート…そんな藤木さんの佐賀バルーナーズへの想いは、チームの未来への期待へと繋がります。「佐賀バルーナーズがB1優勝を決めるチャンピオンシップに出場し、日本一になる姿を見てみたいんです。そのためにも、BalloonTeer、そしてブースターの立場として、これからも精一杯応援していきたいと思っています。」 新シーズンの開幕を控え、彼の言葉からは、すでに高まる期待感が伝わってきます。 |
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新シーズン、ぜひSAGAアリーナで熱気に満ちた試合を体感し、BalloonTeerとして共に熱狂を分かち合いませんか? もしかしたら、藤木さんと一緒に、ブースターの皆さんに最高の思い出を届けることができるかもしれません。 |
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神奈川、長野、大阪と、全国各地でバスケットボールに打ち込んできた井上諒汰(いのうえりょうた)選手。佐賀バルーナーズで地域リーグ時代から活躍し、“ミスターバルーナーズ”の愛称で親しまれる井上選手は、佐賀という街にどんな魅力を見出しているのでしょうか? その答えは、井上選手の言葉の中にありました。 |
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「最初は正直、『県庁所在地って、これで合っているのかな?』って一瞬思いました」と、井上選手は佐賀への最初の印象を語ります。しかし、生活していく中でその印象は大きく変化したそうです。「必要なものは全て揃っていて、とにかく住みやすいです。アリーナもできて、バスケットボール選手として必要なものが全て揃っています。本当に住みやすい街だなと心から思います。」 様々な地域を経験してきた井上選手だからこそ語れる、佐賀の人々の温かさについて、独自の視点で語ってくれました。「大阪に住んでいた頃は、店でオススメを聞くと、『これは絶対オススメ!いつも賄いで食べてます!』と止まらないくらい熱く語ってくれる人が多かったんです。でも佐賀で同じ質問をすると、『オススメですか…?』と、すごく謙虚な反応なんです。最初は少し冷たく感じるかもしれませんが、長く住んでいると、干渉しすぎないけど、困ってたら必ず助けてくれる、そんな優しさを感じます。特に多くの人に注目してもらえるようになった今、この絶妙な距離感こそが、選手にとって住みやすく心地良い環境なんだと思います。」 |
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井上選手は、様々な地域活動にも積極的に参加しています。特に印象的だったのは、医療的ケア児※を支援する“にこっと nicotto”への訪問とのことです。「医療的ケア児のこどもたちと接する機会は、僕としても大切にしているひとつです。“にこっと”は、こどもたちを24時間ケアしており、ご家族がリフレッシュできる時間も確保しています。多くの人にこういった活動があるんだって知ってもらえるよう僕も協力していきたい」井上選手の言葉から地域貢献活動への真摯な姿勢と、こどもそして、そのご家族への温かい愛情が感じられます。 ※日常生活を営むために医療を要する状態にあるこどものこと |
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SAGAアリーナでのプレーについては、「めちゃくちゃプレーしやすいと思いますね。佐賀の方々は、ホーム・アウェイに関わらず、バスケットの試合を温かく見守ってくれて、競技へのリスペクトを持って応援してくれるので、どのチームも力を出し切れる雰囲気があります。」と印象を語っています。どんな応援が一番嬉しいかと尋ねると、「スリーポイントを決めた時に、全員が示し合わせでもなく、みんな手を挙げて声を出して…っていう場面、ディフェンス一本とめたら勝利に近づくという時に、声がそろって、『GO!GO! SAGA!』のコールが出る場面。応援がどんどんすごくなってきたなあと感じます。」とのこと。選手と観客が一体となって盛り上がるアリーナの熱気が伝わってきます。 |
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文学部出身という井上選手におすすめの1冊を尋ねました。紹介いただいたのは、サッカーで日本代表も務めた中村俊輔選手の「察知力」。「スコットランドリーグで優勝した時、次のシーズンはもっと厳しい戦いになることを考えていた、というエピソードが書かれていました。優勝の喜びよりも、次起こることを先に察知し、先回りすることでマイナスをプラスに変えられる、という話です。当時は、『嘘つけ!』と思いました(笑)。日本人選手としてMVPで初めて優勝するのだから、来年どうしようって考えるより、絶対優勝して嬉しいって気持ちがあると思いました。でも今、僕がプロとしてお金をもらってプレーする中で、B2からB1に上がった時も、嬉しかった気持ちはありましたが、同時に『来年B1でどれだけプレーできるんだろうか』とか、『新たな選手が入ってきてどんな競争が起きるんだろうか』と考えることもありました。プレーオフでも、もっと活躍できたはずなのに、チームに貢献し切れなかったという思いが残っています。プロってそういうものなんだなと、その時この本がよみがえってきました。不思議な体験でした。」チーム発足から次第に変わっていく環境を実感した井上選手ならではのセリフ。未来を見据える井上選手の、高いプロ意識を感じます。 |
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8年間、佐賀で生活してきた井上選手が、佐賀市のおすすめポイントとして挙げたのは「古湯温泉」。他にもSNSに投稿された川上峡のこいのぼり写真について伺うと、「毎年見に行きます。今年はカメラを買ったので、どうしても撮りたいと思って。」と語っており、佐賀の生活に溶け込んでいる様子がうかがえます。 今シーズンの目標については、「チャンピオンシップ出場は絶対条件。今シーズンそれを逃したら、意味がないぐらいに思っています。そこをターゲットに、全力で取り組んでいきます。」と力強く語っています。新たにキャプテンとして臨む覚悟とチャンピオンシップ出場への強い決意が伝わってくる井上選手の言葉。 今シーズンの佐賀バルーナーズ、そして井上選手の活躍から目が離せません。 |
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