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太陽が照りつける8月、涼を求めて水辺を訪れると意外な発見があるかもしれません。佐賀のまちには縦横に流れる川や水路が張り巡らされています。古来、水不足に悩まされてきた佐賀平野は、数多くの水路をつくり、雨水を一時的に貯留したり、排水路として利用したりしてきました。さらに、城を守るお濠の役割も果たし小舟による物資の輸送も盛んでした。
そんな歴史ある水路を、いつもより少し近くでのぞいてみてください。古い石造りの橋を渡り、普段は下りない水面につながる階段を下りてみると、見逃していた生き物たちの生活が見えてきます。まちなかを流れる水路は浅瀬が多く、コイやフナが悠々と泳ぐ姿がよく見えます。トンボも気持ちよさそうに飛び、水際には青々とした植物が太陽に向かって伸びています。
水面を渡る風、魚が跳ねる音、季節ごとに咲く草花。水路沿いを歩けば、心がすっと軽くなり、深呼吸したくなる。こんな気持ちのいい場所が身近にあることに、あらためて気付かされます。
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佐賀市中央大通りから平和通りに進み、川沿いに進んだ先のオフィスに書斎のような静かな空間が広がっています。佐賀の天神で建築設計士として「川﨑空間研究所」を営む川﨑康広(かわさきやすひろ)さんの事務所です。昔ながらの佐賀の街並みを尊重し、佐賀の人が大事にしてきた歴史と文化を活かした設計を手掛けられています。 |
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しかし、川﨑さんの活動は、設計のみに留まりません。 「さがクリークネット」の会長として、佐賀の街に脈々と流れる水文化、クリーク(水路)の活用と保全に情熱を注いでいます。 その活動の始まりは、2015年に開催された中心市街地の活性化に向けたシンポジウムの一つだそうです。クリークを活かした街づくりの提案に心を打たれ、川﨑さんは大学の教授や様々な専門家と協力し、クリークの魅力を再発見する活動をスタートさせました。 勧興小学校裏の水路に船着き場を作る、カヤックでクリークを巡る… それは、単なる活動ではなく、佐賀の宝であるクリークと、人々との新しい繋がりを築く試みでした。 クリークから眺める佐賀の景色は、川﨑さんの心を捉えて放しません。「開発されていない歴史ある石垣や、多様な生き物たちが生息する、贅沢な空間が広がっているんです」と、目を輝かせながら語ってくれました。 その言葉には、佐賀市の隠れた魅力を広めたいという静かな意思と、長年の活動を通して培われた取り組みへの誇りを感じます。 |
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江戸時代の佐賀の地図を広げると、現在よりも多くのクリークが街中に張り巡らされていることが分かります。 かつては防衛、生活用水、排水、物流など、多目的に利用されていたクリーク。 現代では、防災対策としての排水機能が重視される一方、その本来の魅力は忘れられがちです。 |
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「佐賀は水辺のまちなのに、その実感を佐賀の人々はあまり持っていない」と川﨑さんは言います。 多くの人に水辺の魅力を再発見してもらうため、川﨑さんは仲間たちと松原川の清掃活動や保全活動に取り組んでいます。クリークの保全と活用を両立させるため、カヤックやサップ、川床スペースの設置など、様々な取り組みを進めています。 クリークを身近に感じてもらうことで、自然への関心を高め、ひいては保全への意識向上に繋げたいと考えているのです。 |
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今年は、暑さや水質の問題でカヤックやサップは中止せざるを得ませんでしたが、10月に松原神社で行われる「日峯さん」のお祭りでは、新たなイベントを企画したいとのこと。 川﨑さんが描くのは、佐賀の美しい水辺、そして、そこに集う人々の姿がある未来。 活動にエールを送りながら、自分たちにもできること、考えてみたいですね。 |
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佐賀市北山。夏の暑さも少し和らぐ、緑豊かな山の中に、大きな湖面が静かに広がっています。その湖畔に佇む「ボートハウス・シノハラ」。 60年以上の歴史を持つこのボートハウスには、年間3,000人以上もの人々が訪れ、自然の恵みと、静かなひとときを満喫しています。 |
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代表の篠原清彦(しのはらきよひこ)さんは、生き生きとした笑顔で私たちを出迎えてくれました。「夏の釣り」について教えてくれるという篠原さん。 ヘラブナ、ブラックバス… そして、意外なことに、ワカサギ! |
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冬の風物詩として知られるワカサギ釣りですが、北山湖では夏にも楽しめるのです。ハイシーズンは10~3月ですが、夏のワカサギは産卵期から外れており、コンディション抜群。 夏場の元気な脂ののったワカサギが釣れると教えてくれました。 まだ多くの人に知られていない、知る人ぞ知る夏の楽しみです。 氷に穴を開けて釣る一般的なワカサギ釣りとは違い、北山湖ではボートに乗って湖上へ。 キラキラと輝く水面に映る景色は、まさに絶景です。ワカサギ釣りは、年齢や性別を問わず、誰でも気軽に楽しめるのも魅力。 篠原さんが教えてくれるポイントさえ知っていれば、初心者でも簡単に釣ることができるんです。 中には、3時間で200匹ものワカサギを釣り上げる人もいるとか! |
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篠原さんの喜びは、訪れた人々が釣りを楽しむ笑顔です。自身も釣りをこよなく愛する篠原さんは、釣果の写真や、自作の仕掛けを見せてくれました。 鳥や鹿、さらには熊などの動物の毛を使った、仕掛けの数々。「どんな仕掛けなら、魚がかかるかな…」と考えながら作るのが、楽しみの一つだそうです。ボートでの釣りも、その楽しみのおすそ分けでしょうか。 |
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篠原さんは言います。「佐賀には、季節ごとに楽しめる魅力がいっぱいあります。 少しだけ準備して、時期を逃さなければ、きっと素敵な思い出が作れますよ。」 佐賀の魅力をいくつも知り、楽しみを作る名人なのかもしれません。 |
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実際にボートに乗って湖を巡ると、篠原さんの言葉通り、素晴らしい景色が広がっていました。穏やかな水面、緑豊かな山々、体を通り抜ける涼しい風。 心が安らぐひとときです。近くには「フィッシングセンターうおまん」もあり、こちらもボートを貸し出されてあり、ワカサギ釣りなどが家族で楽しめます。 この夏は、北山湖のワカサギ釣りで、自然の中でのひとときを過ごしてみませんか? |
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