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子育て応援コラム(令和6年6月号)

更新:2024年06月10日

子育て応援コラム「アタッチメント」No.16 令和6年6月号

ほとんどのご家庭が、多少なりとも4月からの生活には新しい変化が生まれたのではないでしょうか。例えば、大きな変化の例としては、これまで家庭保育だった子どもさんが、慣らし保育を経て、保護者と離れて園で生活し始める、その一方保護者も育休から仕事復帰を始め、予期していた以上の大変さにヘトヘトになっている姿も見かけます。

この2ヶ月間、大人も新生活への適応を余儀なくされたかもしれませんが、子どもたちも、同じように、新しい場所、先生、友達に(本人の自覚はなくても)慣れようとしてきました。

園によっては、可能な限り、担任の持ち上がりを検討したり、新しい環境に慣れるための交流の機会を事前に持ったり、保育室そのものを移動しない選択をしたり、子どもたちの未知なる環境への不安を減らす工夫をされています。新入園児さんたちを迎え入れる在園児さんたちが落ち着いていることも大事と知っておられるからです。

「4月は子どもたちが泣くと覚悟していましたが、今年度の子どもたちは落ち着いていました。」という園長の声も聞くことができました。また、新しい担任の先生方が、最初は近づくと泣いていた子どもたちだったけれど、この2ヶ月間で徐々に、安心できる関係へと変わってきたな、保護者の方とも少しお話しできる感じになってきたなと振り返っておられる声も複数聴きました。少し、新年度最初の山場を越したというところでしょうか。

しかし、子どもたちの多くが園に慣れた姿を見せる中で、なかなか同じようなペースで慣れていかない子どもさんもおられます。最近の話ではなくて恐縮ですが、こんな事例がありました。(保護者の方には、個人情報が特定できない形で概要をお話しする了承を得ています。)

新入園児の3歳女児Aさんは、9月になっても保育室に入れずにいました。親子で登園し、担任に挨拶すると、保護者はサッと手を振り離れていきます。残されたAさんに担任が付き添い、靴を靴箱に入れて保育室に入って行きます。その様子を、保護者がそっと園舎の陰から見守っておられました。ある時、遅く登園してきたので、その時には、先生と子どもたちは園庭にて運動会で踊るダンスをしており、先生もすぐに対応できませんでした。保護者とAさんは、保育室前のテラスに二人並んで座って、その様子を眺めていました。そんな日が数日続き、それからまもなく、Aさんは、自分から靴を靴箱に入れ、自分で扉を開けて、保育室に入っていくようになりました。

私は、保護者にお話を伺うことができました。

「この子は、本当にマイペース、でも芯は強い子です。正直、最初の頃は、なんでうちの子だけが保育室に入ろうとしないのか、私と先生とで、どんなに言い聞かせても、体いっぱいで、いや、入らない!と主張してくるし、園にも申し訳ないな、親として惨めだなと思っていました。でも、もういいや、この子が保育室に入りたいと思うまで付き合おうと決めたのです。だから、この前、自分から保育室に入ってくれたのが本当に本当に嬉しくて。たった、保育室に入るだけで、こんなに嬉しいものだとは思いませんでした。あの子は、半年遅れでこの喜びを私にプレゼントしてくれたのです。4月にすんなり入っていたら、こんな深い喜びは体験できなかった。今も、保育室からお友達の踊りをじっと眺めていますが、一緒に踊っている気持ちかなと。それでいいと思っています。」

こんなお話をしてくださるとは、びっくりしました。勝手に、悩んでおられただろうな、ようやくホッとされただろうなとは思っていたのです。こんな受け止めをされていたとは、お話を聴くまで予想できていませんでした。内なる人間力に敬服した経験でした。

他にも、「子育てって自分の思うようにいかないことを受け入れていく修行の旅ですよね。」「今回のことで、私がこの子に育てられました。」「苦しかった最中には話せなかったかもしれないけれど、今だから話せるんですよ。」そう微笑まれた保護者の方々とたくさん出会いました。思い出すと、雨上がりの虹を見たような気持ちになります。

 

 

こども・子育て支援専門アドバイザー 田口香津子

 

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