子育て応援コラム「アタッチメント」No.14 令和6年4月号
前々回のコラムでは、子どもの権利、体罰によらない子育ての大事さと同時に大人側の葛藤もお伝えしました。前回のコラムは、「体罰によらない子育てに一歩近づけるヒント」として、内面(自己洞察)からのアプローチについて書いています。(まだお読みになっていない方は、そこから読んでいただくと一連の流れが一層わかっていただけると思います。)
今回は、外面(行動制御)のアプローチがテーマです。暴言や暴力行為を回避する、怒りをコントロールするための現実的な対処方法について考えることを予告しておりました。
具体的な対処方法に触れる前に、ABC理論を簡単にご紹介します。人は、何かの出来事によってある感情や行動が引き起こされる【A:出来事→C:結果】のではなく、その出来事をどのように解釈したかによって異なる感情や行動が引き起こされる【A:出来事→B:信念(認知)→C:結果】という理論です。
例えば、子育て中の父親と赤ちゃんの場面。
子が泣いている(出来事)→赤ちゃんが泣くのは仕方ない。お腹が空いているのだろう(合理的な認知)→赤ちゃんを抱いてミルクを与える(結果)。
子が泣いている(出来事)→なんで泣くのかわからない。わざと泣いて困らせている(非合理的な認知)→イライラして子を怒鳴りつける(結果)。
自分の信念・認知を客観的に見直すと行動が変わります。内面(自己洞察)の変化によって外面(行動制御)が変化できることを、アルバート・エリスという学者が理論化し、認知行動療法の基本的な考え方として、さまざまな行動改善に応用されています。さらに詳しい内容を知りたい方は、キーワード検索をおすすめします。
さて、怒りの感情が引き起こされた時、暴言や暴力などの不適切な言動に結びつきやすいことは皆さんも経験上実感されているかと思います。でも、怒りは100%悪い感情なのでしょうか?怒りをはじめ、悔しさや寂しさなど、あらゆる感情は、本来感じていいものです。ある感情を抱くことと、その感情をどう解釈し、どう行動表現するかは別物です。「悔しいから余計努力した。寂しいから会う約束をした。怒りが湧いたので署名活動をした。」というようにプラスの活動に結びつくこともありますよね。
ただ、怒りが厄介なのは、二次的感情と言われ、悲しみや嘆きと言った一時的感情を抱え込んで生まれるものであることと、攻撃的行動に直結しやすく、相手や自分を傷つけるリスクが高いことです。やはり、怒りの感情のコントロールが現実生活では必要になってきます。
やっと本題ですね。まず、言葉の使い方。怒る場面で、「あなたは〜」という言い方になっていませんか?あなたという主語を省略して、「ダメでしょう。馬鹿じゃないの。どうして出来ないの?」等の言い方も含まれます。これを、「私は〜」から始まる言葉に言い換えます。あるお母さんがトライして少し成果を感じられた声のかけ方。「私は、妹を蹴るあなたを見ていたら悲しくなる。そんなことはやめて欲しい。嫌な気持ちがしたら、お母さんに嫌だって言って。嫌な気落ちが吹き飛ぶように、ぎゅっとしてあげるから。」言葉で自分の気持ちを言えるようになることが暴力行為を軽減する一つの道です。
あらかじめ、怒りを感じた時にどうするか、自分に合う対処方法を考えておきましょう。
出来たら、怒りが爆発する前の、小さな前兆に気がつくと対処もしやすいです。「子どものわがままを3回我慢したけど、もう限界、我慢できない。」という、1回目、2回目の我慢の段階で対処して爆発を回避するという感じです。いくつか例示しますので、役に立ちそうなものかどうか、試してくださいね。気軽にできる、効果的な解消法が複数あると最強です。怒りは6秒待てば収まるという学説もあります。怒りの対処法を持っているという自信が怒りの誘発を遠ざけてくれますよ。
・イメージした風船にイライラを吐き出し、膨らまし、両手でパチンと割ってスッキリ(普通に深呼吸してもいいですが、一種のイメージ療法で効果倍増かも)。
・その場で数えながら10回足踏みするかジャンプする(縄跳びも効果あり)。
・大好きな人やモノの写真や動画を見たり、音楽のフレーズを口ずさんだりする。
・「トイレ行ってくる」など、単純にその場から離れる(視界から外れる際、子どもが安全な場所に残るように)
・牛乳や果物などストレス軽減に効果があると言われているものを適量摂取する。
他にも、「アンガーマネジメント」で検索すると対処方法がいろいろ出ています。
「このコラムを見てやってみたけど、あんまりぴったりこなかったんですよ。何か、身近なストレス解消法、知っていますか?」と、周囲のママや支援者とお話しされるきっかけにしてもらえると、それも嬉しいですね。
佐賀市こども・子育て支援専門アドバイザー 田口香津子