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子育て応援コラム(令和6年1月号)

更新:2024年01月15日

子育て応援コラム「アタッチメント」No.11 令和6年1月号

謹賀新年。2024年は、元旦より悲しく痛ましい災害や事件が次々に起こり、被災された方々のことを想うと、晴れやかな気持ちにはなりきれなかったスタートでした。改めまして、皆様にとって、平穏で佳き一年になりますようにと祈ります。

このコラムの読者は、実際に子育てや保育に携わっている多数派の「女性」と想定してきましたが、決めつけは良くないなと気がつきました。テーマによっては、対象を絞って書きたいと思いますが、できる限り、女性にも男性にも、家族の多様な在り様にも思いを馳せながら、広く関心を持っていただけるよう、コラムをお届けしたいと思います。

近年、保育現場でも子育て支援現場でも、お父さんの姿が多いですよと聞くようになりました。確かに若い世代では、「男は仕事、女は家庭」という固定的な性別役割意識は減っています。令和5年度の男女共同参画白書のアンケート結果にも、家庭参画の時間を今以上に望む男性の増加、社会参画を続けたいと望む女性の増加が見られます。同白書では、「我が国の未来を担う若い世代が、理想とする生き方、働き方を実現できる社会を作ることこそが、今後の男女共同参画社会の形成の促進において重要」と提言し、それを「令和モデル」と表しています。その早期実現に向けて特に優先すべきこととして、「1.男女ともに自分の希望が満たされ、能力を最大限に発揮して仕事ができる環境の整備  2.男女ともに仕事と家事・育児等のバランスが取れた生活を送ることができること  3.これらを下支えする前提としての、女性の経済的自立」が挙げられています。

私は、概ね賛成なのですが、残念ながら、そこには、健やかに育つ権利を持つ子どもの視点がどれほど重視されているのか、わかりません。子育て期は、労働経済優先ではなく、養育者と子どもとの両方が社会と関わりながら育ちあう環境が優先されてほしいと願います。仕事を続けるにせよ、子育てに十分時間を費やせる社会環境を整備してほしいし、養育者が、ある時期において、仕事より子育てを優先する選択肢も軽視されて欲しくないのです。子育ての重要性を基盤とした、多様な人生設計の保障が望まれます。

20年以上前になりますが、アメリカで100組の子育てカップルの養育行動を分析した研究概要を読みました。100組の共通項は、父親が育児の中心を担っていると言うことです。

例えば、単身赴任で週末帰宅する母と平日子育てする父、または、早朝から夜遅くまで仕事をする母と毎日保育園の送迎と家事育児をする父といった具合です。

実に、興味深い結果でした。100組中100組が、子どもの健康や安全に関する細やかな気配りといった、いわゆる、従来の「母性的」な養育行動を父親が行い、子どもと遊び、変化や楽しさを与えるといった、いわゆる従来の「父性的」な養育行動を母親が行っていたと言うのです。

研究者は、この見事な逆転現象の結果から、性別による育児の適性の違いがあるわけではなく、たまたま、歴史的に養育第一責任者を女性が、第二責任者を男性が担ってきただけに過ぎない、それを第一責任=母性=女性、第二責任=父性=男性と決めつけていたと言う考察をしていました。つまり、第一責任者の役割を果たそうとすれば、男性にも十分できるのだと言うのです。「母性のある女性が育児に適性がある」といったような類の、刷り込まれてきた常識という鱗が目から剥がれたような瞬間は貴重でした。

現に今、イクメンという言葉で持ち上げられなくても、子どもの養育に抵抗なく携わる父親が増えてきています。乳幼児期の数年間は、思い通りにならない子どもを中心に回る分刻みのハードスケジュール。それでもなお、それだからこそ余計に、子どもの育ちにコミットできる喜びを感じている人は、女性にも男性にも性別を問わず確かにいます。子育ての責任を母親だけに押し付けないという認識がもっと広がってほしいと切に思います。

今回は、共働き、共育児の話題を書きました。現実には、ひとり親で子育てに奮闘しているご家庭もありますし、子の養育を祖父母にかなり任せて、両親共に仕事中心という家庭も少なくない気がします。それぞれの家庭状況に、個々の事情も背景も知らないのに、優劣をつけるような発想はしたくありません。令和の時代は、個別最適なサポートを受けられる仕組みづくりが福祉でも教育でも求められてきています。

けれど、もし、このコラムを目にされた子育て真っ最中の方が、自らの許容量を超えていると自覚があるならば、性別問わず、自分と子どものためにも、身近な子育て支援者に早めに相談してもらえたらと願っています。その行動ができるのは、あなたの弱さではなく、人を信頼し、自分の弱みを打ち明け、サポートを活用できる、あなたの強みです。

佐賀市こども・子育て支援専門アドバイザー 田口香津子

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子育て支援部 子育て総務課 子育て政策係
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