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子育て応援コラム(令和5年9月号)

更新:2023年09月13日

子育て応援コラム「アタッチメント」No.7 令和5年9月号

内と外。身内に見せる顔と身内でない人に見せる顔が、全く同じ人がいるのでしょうか。ほとんどの人が、外面(そとづら)を持って生活を営んでいる、それが自然な姿だと思います。純粋無垢に見える幼い子も、家族それぞれの性格や関係性を感じ取り、叱られた時には、誰に甘えれば受け止めてもらえるか、逃げ場がわかっているな、と気づくことがあります。

4歳になる頃には、相手の反応や場面に応じて自分の言動を調整する(変化させる)力が身につきます。親に見せる顔、兄弟に見せる顔、園の先生に見せる顔、大人がいない時に友達に見せる顔が違うのです。親は自分といる時に見せる子どもの姿をその子自身と思います。「聞き分けの良い素直で優しい子」あるいは「思う通りにならないとすぐに泣き出す甘えん坊」と思い込んでいた子が、ある時、「お友達にひどい言葉を吐いていました」あるいは「最後まで根気強く取り組んでいました」という話を聞いて、すぐには信じられない気持ちになります。特に、自分に見せたことのない悪い印象の姿は受け入れ難いものです。子どもに本当なのかと尋ねると、子どもは、本当のことを言えず、「そんなことしていない」と答えることもありうるのです。うちの子どもが嘘をつくなんて絶対あり得ない、と親が思いたくなる心情も十分頷けます。たった4歳の子が?と驚かれるかも知れませんが、自己中心的思考段階の幼児は、怖い思いをしたくない、こうありたいという願いが強い、想像と現実の区別が曖昧等、無自覚に客観的事実と異なることを口にすることがあります。嘘をつくなんて許せないと考えがちな大人との認識のずれが生まれてしまいます。親に見せない顔が親に知られた時の子どもの対処行動。どうか、子どもを追い込まず、「この時期にはあり得ること」と寛容に受け止めてほしいところです。

相手に応じた振る舞いを会得することは、子ども集団の中で生き抜く知恵を育てているとプラスに捉えることもできます。それは、ごっこ遊びを通して自然と育ちゆく社会性にも通じることです。少し具体的な場面を挙げて説明しましょう。

きょうだいは些細なことで喧嘩をしますよね。喧嘩の直後に、お姉ちゃんの方が、同い年の友達から、「ねぇ、おうちごっこ(家族ごっこ)しない?」と誘われ、「いいよ、何になる?」、「じゃあ、パパする」、「うーん、ママするかぁ」という流れになると、泣いていた妹の方が、気持ちをぱっと切り替えて「じゃあ、赤ちゃんしたい」と言い出す、というような場面です。

さっきまで怒っていたはずの姉が、優しく赤ちゃんを御世話する母親に、泣いていたはずの妹が、お母さんに甘える赤ちゃんになりきります。ごっこ遊びという空間に身を置くと、喧嘩していた際のリアルな感情を引き摺ることなく、役に応じた振る舞いができます。つまり、ごっこ遊びは、自分と違う立場の人と関係を維持する土台となる経験なのです。

幼児期の遊びは、その過程で、自分の気持ちと相手の気持ちとがぶつかり、思い通りにならず喧嘩となった後に、相手の立場を思い、どう折り合いをつけ、仲直りをしていくかという学びの場に自然となります。私たちも、親に見せない顔を持った子ども同士の喧嘩を成長にとっての大事な経験と捉え、安全には充分気をつけながら、そのやりとりを見守れるようになりたいものですね。

佐賀市こども・子育て支援専門アドバイザー 田口香津子

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