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『テクノロジーとの融合で、豊かな地域社会を』
株式会社オプティム 菅谷 俊二社長 ☓ 佐賀市 坂井英隆市長(2022年6月25日佐賀新聞掲載)

更新:2023年05月22日

ー DXが企業の最重要経営課題に ー

ー 日本一便利な田舎を目指して ー

                               (佐賀新聞に令和4年6月25日に掲載したものを再編集しました)

 

 今回は、佐賀市のDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進に力を入れている坂井英隆市長が、佐賀大学在学中に起業した株式会社オプティムを東証プライム上場企業に成長させた菅谷俊二社長と、佐賀市の向かうべき未来について熱く語った。

菅谷社長と坂井市長(加工)

「壁を喜ぼう」

坂井 今日は、菅谷社長におめにかかれて光栄です。菅谷社長が書かれた本を読ませていただいたのですが、「必要」や「課題」をどんどん形に変えていかれる力に感銘を受けました。オプティムを起業されたのは、2000年ということですが、当時は、インターネットが常時接続でない時代。地元の大学からオプティムのような革新的な企業が誕生したということは驚きです。

 私はもともと弁護士をしていて、30代前半に国交省に転職したという変わった経歴を持っています。そのためか、縦割りにはまらない横断的な仕事を各部署でやってきました。大きな変化は災害の頻発化と人口減少です。人口減少の時代に地域が抱える課題にどう対応していくのか、国もいろいろ新しい取り組みは考えるのですが、画一的な制度だと変化のスピードについていけないのが実態です。だからこそ、今の時代、地方で技術を持っている企業と、地方がもともと持っていた良さがマッチングすることで、様々な課題を解決できるのだと思います。

 佐賀市は、コロナ以前からITに力を入れてきました。テレワーク環境で九州ナンバーワンの評価を受けていますし、ここ10年で、IT系企業が26社進出し、1,300人以上の雇用が創出されてきました。また、佐賀駅南のアイスクエアビルにインキュベートルームを作って新しい企業が生まれる環境整備を行ってきました。

菅谷 実は、私は神戸の生まれなんです。父が工業高校の教員をやっていたこともあって、小学3年の頃にはゲームを作って友達に売ったりしていました。農学部に行ったのは、人類にとってインパクトがあって、人の役に立つ技術が農業だと思ったからです。私は2000年に、一旦佐賀大学を休学して、ITベンチャーを始めました。初めは、請求書や見積書の書き方もわからず、鳳雛塾の皆さんや、佐賀の政財界の皆さんにいろんな人を紹介してもらったり、アドバイスをいただきました。今、第4次産業革命に突入していくという中で、佐賀は、ある意味、日本、世界の未来図みたいなものだと思います。人口規模や高齢化の問題など、佐賀には未来の日本の姿があります。オプティムでは、「壁を喜ぼう」と言っています。壁を最初に登ったら、あとから来た人に対して圧倒的優位になれると思うのです。日本の未来の課題を人より少し早く知って、それを解決することで、日本にとっても世界にとってもお役に立てると思っています。

対談①菅谷社長(加工)

妄想が私たちの走る原動力

菅谷 「面白がること」を大切にしています。オプティムという社名は、オプティマイゼーション(最適化)とオプティミズム(楽観主義)を掛け合わせて作った造語です。AIやDXといった最新の技術を使って、社会を最適化することを使命と考えているのですが、やってみるといろんな壁にぶつかります。壁自体は、苦しいものですが、それを面白がるという楽観主義が必要と思っています。社内でよく「こうなると面白いね」とか「こうなるとすごいね」というような妄想をするのですが、そうなると実現したくてたまらなくなるんです。こういった妄想が私たちの走る原動力ですね。

坂井 課題があるからこそポジティブになることが大事。そして、それを乗り越えたら新しい時代が見えてくる、そういう気持ちがこれからは必要なんだなと改めて感じました。日本のデジタル化は遅れていると言われていますが、コロナでその重要性が広く実感されました。DXには、市民生活が便利になり、企業の生産性も大きく向上するというポテンシャルがあると思っています。令和3年末、佐賀市DX推進本部を立ち上げて、令和4年3月末に推進方針を策定しました。未来の姿を「妄想」して、ワクワクするような未来、デジタル技術を使って、こうあったらいいなという未来を実現できるようにしたいと思います。一つ例を挙げると、佐賀市は、「介護予防DX」という仕組みに取り組んでいます。民生委員さんや市医師会などと連携して、医療、介護、健診など7億個のデータを収集、分析します。そして重症化リスクの高い人にプッシュ型(市役所から皆さんに向けて)で発信し、重症化する前に、必要な人に必要な支援をし、健康長寿のまちを実現するというものです。

対談②坂井市長(加工)

人がやれないことに特化してやる

坂井 先日、田植えの体験をしました。実際にやってみると難しいですし大変でした。農業は、高齢化や担い手不足が大きな課題となっています。佐賀市の農業には、効率化、省力化とそのためのスマート化が必要になると思っています。現在、オプティムの知見もお借りしながら、ドローンを使った転作確認や災害箇所の確認の実証実験を行っています。農業というのは長年の経験が必要で、新規就農者にはそこもハードルとなるのですが、そういった技術の伝承にもAIなどのデジタル技術が有効だと思います。

菅谷 農業の基本は、佐賀の皆さまに教えていただきました。農業の課題は、「稼げる農業にする」ということにつきると思います。今の農業は、生産者にリスクのすべてが集まっています。安心して農業に参入するには、リスクを分散してあげる必要があります。私たちは、新しく開発したテクノロジーを買っていただくだけではなく、リスクも我々がとるという方式をとっています。スマート農業で肝心なのは、効率化、省力化、そして特に重要なのがサービス化だと思います。今の農業は、田植え、除草、施肥、防除、収穫などすべてを生産者が一人でやらなければならない。ところが他の産業界で見ると、給与計算などを自前でやっている企業は、ほとんどなく、みんな外注しています。事業は、人がやれないことに特化してやることが必要です。例えば、我々は今年、全国で数千ha規模の農場で防除を行います。所有者はバラバラでも、防除分野においては一つの大きな農場という考え方です。農薬散布を防除のプロがやれば、コストが下がり生産者の利益を上げる効果があります。オプティムは、スマート農業の技術とサービス化により、生産者が垂直統合的な生産を行う構造から、必要なサービスは活用する水平的な生産構造になるお手伝いをしたいと思っています。

オプティム外観

第2のオプティムの誕生を望む

菅谷 私が佐賀に来た1996年は、まさに、日本におけるインターネット元年でしたが、2022年は、もっと大きなインパクトの時です。AI、IoT、ロボットを使って、第4次産業革命がおこっています。東京では、コロナ禍の中、企業経営者の感覚が大きく変わり、DXがあらゆる企業にとって最重要経営課題になっています。我々は、AI、IoTの3段原則と言っているのですが、農業を例にとって説明しますと、ドローンを使って畑全体が見えるようになったのが、第1段階の「みえる化」です。第2段階として、AIによる画像解析で害虫がいる場所がわかる「わかる化」です。そして、そこにドローンが農薬をまきに行く「できる化」です。この「みえる化」「わかる化」「できる化」は、今後、医療や建設などあらゆる産業分野に適用されると考えています。例えば、スマホのアプリ一つで図書館のサービスや、施設の予約、申請・手続き・相談など、市役所のサービスが何でも受けられる、そういうスーパーアプリがあると楽しいと思いませんか。

坂井 菅谷社長の、夢があふれるお話にワクワクしました。国立大学内に東証プライム上場企業の本店があるのは佐賀だけです。オプティムは、佐賀大学の学生のみならず、未来を担う産業界の皆さんにとっても希望の光だと思います。今後、佐賀市がDXを推進していく中で是非アドバイスをお願いしたいですし、デジタル人材育成などについても連携をお願いしたいと思います。オプティムがさらに発展すると同時に、第2第3のオプティムが佐賀市から誕生することを願っています。

私の夢は、「日本一便利な田舎」をつくることです。これまでのまちづくりは、工業化など大都市を目指す流れでした。これからは、自然、歴史、文化、食など地域のありのままの良さと最新のテクノロジーがマッチングすることで、豊かな社会をつくることだと思っています。「佐賀こそ最先端」を実現していきたいと思います。

 

 

 

 

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