ローテク・ハイテク(2014年11月4日)

更新:2017年03月 9日

ローテク・ハイテク

先月、福岡市へ視察に行く特急列車内での出来事。

私は佐賀駅から座席指定券を持たずに、博多行き特急の指定席車両に乗り込んだ。この車両は指定席券がなくても席が空いていれば、その指定席券を購入した人が来るまでは座れるという「特別の車両」であり、私もよく利用する。

その日、車両は混んでいたが、中ほどに席が空いているのが見えた。近づいてみると、空いているというより、客はいないがトランクが座席を占領している状態だ。「この席のお客さんはトイレなのかな?」と一瞬考えたが、そうではなく、そのトランクは隣の席で「スマホ」を動かしている青年のものと見て取れた。

そこで、私はその青年に「この席空いていますか」と尋ねた。するとその青年、ムッとしたような顔をして無言で自分の膝の前にトランクを動かした。私は「すみませんね」と言いながら空いたその席に座ったが、その青年は、ふたたび何も言わず「スマホ」と「にらめっこ」したままである。

「いいえ…」というぐらいの返事を期待した私は、その青年に不快なものを感じた。「こんな若者が増えたらこれから先、日本はどうなるだろう」という不安感さえ湧いてきた。

「スマホ」に集中する乗客の姿は、大都市では当たり前で、特に若者に多く、最近では佐賀でも通勤時のバスで目にする光景である。東京の電車の中での光景だが、足腰の弱そうなお年寄りが前に立とうと、出産が近い女性がそばに立とうと、われ関せず、席を譲る気配さえ示さず、じっと「携帯」をいじっている若者の姿には、腹立たしさを越え、虚しささえ感じることがある。

今年9月、最先端技術の代名詞とも言われているアメリカのスティーブ・ジョブズ氏の子育てが意外にも「ローテクだった」と新聞で知った。ニューヨークタイムズの記事を引用されたものだった。

2011年56歳で亡くなったジョブズ氏だが、彼は未婚の大学院生の子供としてこの世に生を受け、養子として育てられている。彼の成長過程では、実の親に育てられた子供とは比較にならないほど苦労も多かったに違いない。

そんな彼だが、彼にはテクノロジーに関して本能的な才能が有り、あの有名なアップル社を立ち上げ、紆余曲折もあったようだが、世界で注目される企業に発展させた。

そういうジョブズ氏のことだから、彼の家庭では子供を含めて、さぞかし、最先端のハイテクを駆使する姿が想像されるが、事実はそうではなかったとのことである。

新聞によると、ニックベルというジャーナリストが、ジョブズ氏の子供がどのくらい「アイパッドに夢中」なのか氏に質問したところ、「子供たちはまだアイパッドを使ったことがないのです。私は子供たちのハイテク利用を制限しています。」という返事がかえってきたということである。

質問者のニックベルさんは「あっけにとられ、空いた口がふさがらなかった」という。ジョブズ氏が亡くなる1年ほど前のことだという。

私もこの新聞記事を見て驚いた。私も、タッチパネルの機器で遊ぶ子供たちの姿に少なからず懸念を抱く者の一人だが、ジョブズ氏がわが子にハイテク利用の制限をしていたという「そのわけ」を、無性に聞きたくなった。

しかし、氏は「今は亡き人」、それが聞けないのが残念だ。

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