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卒業式シーズン(2017年3月1日)

更新:2018年01月 5日

 早くも3月、卒業式のシーズンとなった。

 褒められたり、怒られたり、励まされたり、いろいろな思い出を胸に、子どもたちはお世話になった母校を後にする。

 

 数日前、私はインターネットで「縁を生かす」という題で書かれた物語を目にした。ある教師と教え子の間の目頭が熱くなるほどの「師弟愛」を扱った話である。感動したので紹介したい。

 この物語、すでに読まれた方もあるかと思うが、私が開いたインターネットには2005年12月号の月刊「致知」に掲載されたものだと付記されていた。

 

 「縁を生かす」

 その先生が5年生の担任になった時、一人、服装が不潔でだらしなく、どうしても好きになれない少年がいた。

 中間記録に先生は少年の悪いところばかりを記入するようになっていた。

 

 ある時、少年の1年生からの記録が目に留まった。

 「朗らかで、友達が好きで、人にも親切。勉強もよくでき、将来が楽しみ」とある。

 間違いだ。他の子の記録に違いない。先生はそう思った。

 2年生になると、

 「母親が病気で世話をしなければならず、時々遅刻する」と書かれていた。

 3年生では、

 「母親の病気が悪くなり、疲れていて、教室で居眠りする」

 3年生の後半の記録には、

 「母親が死亡。希望を失い、悲しんでいる」とあり、

 4年生になると

 「父は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、子どもに暴力をふるう」

 

 先生の胸に激しい痛みが走った。

 ダメと決めつけていた子が突然、深い悲しみを生き抜いている生身の人間として自分の前にたち現れてきたのだ。

 先生にとって目を開かれた瞬間であった。

 

 放課後、先生は少年に声をかけた。

 「先生は夕方まで教室で仕事をするから、あなたも勉強していかない?わからないところは教えてあげるから」

 少年は初めて笑顔を見せた。

 それから毎日、少年は教室の自分の机で予習復習を熱心に続けた。

 授業で少年が初めて手をあげた時、先生に大きな喜びがわき起こった。

 少年は自信を持ち始めていた。

 

 クリスマスの午後だった。少年が小さな包みを先生の胸に押しつけてきた。

 あとで開けてみると、香水の瓶だった。亡くなったお母さんが使っていたものに違いない。

 先生はその一滴をつけ、夕暮れに少年の家を訪ねた。

 

 雑然とした部屋で一人本を読んでいた少年は、気がつくと飛んできて、先生の胸に顔を埋めて叫んだ。

 「ああ、お母さんの匂い! 今日は素敵なクリスマスだ」

 

 6年生では先生は少年の担任ではなくなった。

 卒業のとき、先生に少年から1枚のカードが届いた。

 「先生は僕のお母さんのようです。そして、今まで出会った中で一番すばらしい先生でした」

 

 それから6年。またカードが届いた。

 「明日は高校の卒業式です。僕は5年生で先生に担当してもらって、とても幸せでした。おかげで奨学金をもらって医学部に進学することができます」

 

 10年を経て、またカードがきた。

 そこには先生と出会えたことへの感謝と父親に叩かれた体験があるから患者の痛みが分かる医者になれると記され、こう締めくくられていた。

 「僕はよく5年生のときの先生を思い出します。あのままだめになってしまう僕を救ってくださった先生を、神様のように感じます。大人になり、医者になった僕にとって最高の先生は、5年生のときに担任してくださった先生です」

 

 そして1年。届いたカードは結婚式の招待状だった。

 「母の席に座ってください」

 と1行、書き添えられていた。

 

 この物語、いつごろの学校風景だろうか。

 夜遅くまで明かりがついている学校を見かける。

 最近の学校現場は「忙しさ」が増し、子どもに接する時間さえ十分取れないといわれるようになった。

 何が学校を忙しくしているのか、お互いに考えたいものだ。

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