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このままでよいのか(2016年3月1日)

更新:2017年03月 9日

 先月末、ある全国紙を見ていると「ふるさと納税で日本を元気に」との大きな活字が目に飛び込んだ。その上段には、「簡単に自宅からできる地域貢献」という小見出しも添えてある。

 これを見て、私は一瞬「これは政府広告かな」と思ったが、そうではなかった。それは、ふるさと納税をサポートする、ある旅行代理店グループの全面広告であった。

 

 「地方の時代」と言われて久しい。

 地方の時代とは、地域住民に一番近いところにある地方自治体が、それに見合った権限移譲と財源配分を求めるとともに、その責任と義務を果たすというものである。国に頼り、追従するだけではなく、知恵を出し、汗もかき、各々の地域の活性化のために努力することを意味している。

 地方が汗をかき、知恵を出すという部分では、地方は「自分たちの力」を試され、ある意味では「知恵比べ」「力比べ」でもある。

 現在、全国の自治体が取り組んでいる「まち・ひと・しごと創生総合戦略」がまさにその実践といえるが、この「知恵比べ」で最近気になることがある。それは前出の広告にあった「ふるさと納税」に関して、である。

 

 自治体に多くの納税者を取り込むための戦術を提供し、その事務を代行する業務がビジネスになっているのである。つまり、依頼された自治体のふるさと納税に関する情報発信などをサポートし、業務代行さえ請け負うというのである。中には成功報酬制度で運営している会社もあるらしい。

 

 「如何に多くの納税者を取り込むか」は基本的には知恵比べであり、自分のまちの特徴などを売り込むことはお互い競争の範疇だと容認できる。しかし、手続きの簡便さや返礼品の「品揃え」や「豪華さ」を競い、返礼品の半(5割)返しも珍しくなくなり、こうした返礼割合が高いところほど納税者の人気も高いらしい。ここまでくると、金目で納税を迫る気配が感じられ、私の心は穏やかではない。

 

 また最近では、自分のまちの住民にふるさと納税制度を勧め、返礼をするところも出てきたという。住民税が一旦は減収となるものの、地方交付税で75パーセント補填されるという交付税制度に目を付けられたようだが、私には「悪乗り」しているとしか映らない。

 得をする自治体があれば、その陰には損をする自治体もあるはずだが、そこが見えにくい。地方交付税の財源は限られている。お互いに「タコの足食い」をしてはならない。

 

 このふるさと納税制度を返礼品という恩典から見ると、低所得者には魅力が少なく、所得が高くなるほど魅力が増す逆累進的な制度である。

 これらの行き過ぎた事例を見て「返礼品で争奪戦」と揶揄した報道もあったが、反論できないのが残念でならない。

 ふるさと納税の所管官庁である総務省は「返礼が過度にならないよう」に指導文書を出しているが、効き目のほどはどうだろう。

 ふるさと納税とは納税者の無償の寄付であり、自分を育んでくれたふるさとを応援するという本来の理念をお互い大事にしたいものだ。

 

 ところで、平成27年度に佐賀市がいただいたふるさと納税は、今年1月末現在、1,811件、3,040万円を少し超えたところで、佐賀県内では下位に位置する。全国的にも、10億円を超えたところもあり、半返しにしても相当の自主財源が確保されることになる。

 

 佐賀市では、市外からの5,000円以上の寄附に対してお礼の品物をお返ししている。返礼の割合は寄附額の2~4割程度であり、50,000円以上の寄附をされても返礼品は50,000円のメニューの品物で頭打ちである。

 佐賀市はできれば返礼の割合を据え置きにしたいが、周りを見ると、それは単なる「やせ我慢」にすぎないようにも思える。

 「背に腹は代えられない」とするのか、「このままでよい」とするのか、悩ましい。

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