子育て応援コラム「アタッチメント」 No.26 令和7年4月号
このコラムが皆様の目に届くのは、葉桜の頃かなと想像しています。執筆しているのは、4月2日。桜も満開の見頃です。タイムラグがあるとは思いながら、予定していたコラム内容を変更して、今日見聞きした親子の姿をお伝えしようと思います。
朝、ある保育園に登園する数組の親子の姿を見る機会がありました。膨らんだ布バックを肩にお父さんが1歳児らしき子どもを抱っこして門を開けて園庭へと入って行きました。入れ替わりに夫婦で門を閉めて駐車場へ出た数秒後に、門のところまで泣きながら追いかけてきた子ども。直ぐに赤ちゃんを抱っこした保育者が、何か声をかけて、その子の手を引いて、園舎へと戻って行きました。ご夫婦は、振り返って様子を見ていましたが、数秒後、車に乗り込んでいかれました。園舎から子どもの泣き声が門の外まで漏れ伝わってきました。乳幼児は泣くと言う行為で不安を伝えます。馴染みのない環境に身をおけば不安になるのは自然なこと。とはいえ、馴染むまでにたどる心模様を思うと、切なくなります。大人も、振り返った数秒、行動に移さずとも、駆け寄りたい、抱きしめたい気持ちが湧きあがったかもしれません。それを振り払って、仕事に向かわれた気持ち。ああ、いよいよ親も子も新生活が始まったなぁと実感しました。
このような親子の別れのあとに、夕方になって再び会える喜びが待っていることを、こどもは繰り返し経験していきます。親とさようならと別れた後にも、友達や先生と過ごす中で、ワクワク楽しいことがあり、美味しいご飯やおやつがあり、また明日といってお家に帰って寝て起きたら保育園に行く、と言う毎日を自分のものとするまでの事です。それまでは、お家で疲れて不機嫌な態度を見せたり、甘えたり拗ねたりするでしょう。親は、余裕がない時に余計手間が取られるようでイラッとしがちですが、「〇ちゃんも疲れたよね。実は、ママ(パパ)も」と、ふっと息が抜けるといいですね。新生活の嵐を乗り切る家族の物語にするのも手です。嵐が共通の敵で、家族は同じ船の乗組員。仲間同士で争っていると船が沈没しちゃいます。「よおし、明日のエネルギー補給。オムレツ食べるぞー。」親子の対立の構図でなく、敵を倒すチームにしてしまいましょう。漫画、ワンピースみたいですね(笑)。
このコラムが届く頃には、入学式も終わり、新しい空間で、新しいクラスの仲間、新しい先生と出会って、それぞれの表情や声や仕草や態度を通して、どんな人かな?安心できる場所かな?と探索する日々が多くの子どもたちに始まっていますね。小学校一年生の姿を想像してみましょう。親の手を離す。重いランドセルを背負って歩く。門をくぐる。靴を脱ぐ。教室に入る。言われた席に座る。馴染みの薄い友達のワイワイと騒ぐ声や動き回る気配の中に居る。約束事をいっぱい覚える。椅子に座って同じ姿勢で居る。頭に浮かんだしたいことを我慢して先生の話を聴く。名前を呼ばれたら、大きな声で発言する。初めてのメニューを食べてみる等など。6歳の身になってみると、未知の環境に馴染もうと頑張っていますよね。ほんと、偉いですよね。愛おしくなりますね。
さて、この未知の環境に対するアンテナの感度には自ずと個人差があります。いろんな植物が育って自らの花を咲かせるが如く、それぞれ比較して優劣がつけられないかけがえのない存在として皆生まれてきました。本来、良し悪しで測るものではないのですが、子どもと日々関わってきた親からすると、「そこまで気にしなくても、こだわらなくてもいいのに。なんであなただけが。」とついつい気落ちし、愚痴りたくなるものです。やはり、親にもその心情を受け止めてくれる人が必要です。
親の手を離すのが難しい。ランドセルを背負うのが嫌。門をくぐれない。教室に入れない。安全感に高い感度を持つ子どもたちの多くは、キラキラとした宝物を心身にいっぱい秘めているのですが、安心の環境だというスイッチが入らないと、せっかくの宝箱は開かないのかもしれません。どんな状況の子にも未知の環境に馴染むためのエネルギー補給は必要です。みなさんにとって、安心できる個別最適な環境を一緒に考えてくれる人は誰でしょうか?
「大丈夫ですよ。」と、安心の一言を言ってくださる人が身近にきっといてくれることを願っています。親に弱音を聴いてもらえる関係性があると、こどもの心情を思いやれるゆとりもちょっと生まれてきますから。
佐賀市こども・子育て支援専門アドバイザー 田口香津子
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