子育て応援コラム「アタッチメント」 No.25 令和7年3月号
3月。寒さがほころんで、暖かさを感じるようになる季節ですね。今回は、心の傷つきと回復についてお話ししてみたくなりました。
皆さんは、心が弱っている状態の時、いつもにも増して、傷つかないように心の殻を固くしているはずなのに、自分に向けられたわけでもない、何気ない会話が聴こえて来て、その言葉に驚くほど心が震えてしまった、という経験はないでしょうか?
例えば、「あら、○○さん、元気そうね。」「まあ、会えてよかった。あなたの笑顔は、最高ね。周りを幸せにするわね。」と見知らぬ人同士がお喋りをしていたとします。自分が元気な時は、人は人、自分は自分と、さらっと流せるものなのに、心が弱っていると、つい、自分のエネルギーを消耗させるような受け取り方をしてしまいます。例えば、「笑顔になれない私は、どうせ、家族や友人にとっても迷惑な存在なんだ。」、「私のそばで幸せオーラを振り撒かないで。余計惨めになる。」という思いが湧いてしまうのです。本当に弱々となってしまった時は、「わざと私をいじめているの?」と被害的な受け取りになることもあります。
ある方は、「今晩のおかずは何作るの?」と保育者が他の保護者に尋ねている声を聞いて、「ぼやぼやしないで、夕飯を作りに帰りなさいよ。どうせ、あなたは、大した料理を作れないでしょう。」と、母親から責められたような気になったことがあると話してくれました。何気ない会話を聞いたことがきっかけで、不意に、過去の辛い経験が蘇ってくることもあるでしょう。
そんな時こそ、立ち止まって自分の姿を鏡で見るような機会にしませんか。「あ、今、私、思った以上に疲れているんだ。きついのにきついって言えずに我慢しているんだ。心が擦り切れて悲鳴をあげているんだ。」良い悪いと判断せず、そのままの事実として受け止めて欲しいです。
ここで弱音を吐いたら、相手から余計傷つけられる展開になるという怖さを持つ人も少なからずいるでしょう。過去の経験がそう思わせているのです。どうか、普段の生活の中で、アンテナを立てて、この人なら大丈夫という方を探してください。怖いという感情は、未来の危機を回避するために働く役割があるそうです。怖いからこそ、痛みを繰り返さないために、安心できる存在を探しましょう。
心の弱さをそのまま受け入れてもらえた経験を繰り返すと、この人なら、弱音を吐いても大丈夫という存在に、将来なっていただける可能性があります。自らを客観視できるようになった当事者の方が、ピア(仲間)の支え手に成長していく姿をいくつも見てきています。
「よく我慢して来たね。大変だったね〜」、「私も同じように苦しかったから少しわかる気がするよ」ひび割れて弱くなった心の内側に、人の優しさが深く染みて来た経験を私も持っています。いっぱい泣いた後に、雨上がりの虹が出たような、清々しさを感じた人もいるのではないでしょうか。お腹が痛い時や熱が出た時薬を飲むように、お腹が空いた時ご飯を食べるように、心が弱くなった時にも、お薬となる手当の方法はいくつもあります。春が近づいて来ています。温かい場所を探しに歩き始めましょう。
佐賀市こども・子育て支援専門アドバイザー 田口香津子
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