子育て応援コラム「アタッチメント」 No.24 令和7年2月号
令和7年1月号では、「状態」として相手を柔軟に捉える話を致しました。子どもを怒鳴りつけている親が知人や友人だった場合、その人の「状態」に合わせた理解の仕方や声かけの工夫を2月号では具体的にお話ししたいと書きました。
ちょうど先日のことです。佐賀にお見えになっていた、父親の子育て支援の第一人者、大阪教育大学教授の小崎恭弘さんの言葉、「不機嫌は環境破壊」が、心に突き刺さりました。 やはり、不機嫌でいることの悪影響、自らの感情のコントロールを放棄していることへの警告だとはっとさせられました。時間がかかるかもしれませんが、相手の安心感や自由を奪うことなく、自分の想いを伝える術を身につけていきたいものです。
相手の不機嫌さに遭遇した人も、本来は相手の問題、相手をサポートするかしないかは、自分で選択できる立場だと認識し、相手の不機嫌さの渦に巻き込まれないようにできたらいいですね。その前提があったうえで、不機嫌な相手にどんな関わりができるでしょうか?
ついつい、なぜ怒っているのか、イライラしているのか、理由を知りたくなりますが、第一声に「なんで怒っているの?」という声掛けは、相手を責める響きに受け取られやすいです。周囲に人がいなければ、声が耳に届く距離から、相手の名前を呼びましょう。名前を呼ぶことで、周囲の人の注目を集めるのがまずいと判断したら、「ごめんなさい、ちょっと、いま、話しかけてもいい?」という声掛けはどうでしょう。相手の方が、その声を聴き、自分へ視線を向けて、友人知人である自分の存在を認識したら、穏やかな口調で「どうしたの?何かあった?」と声かけてみてください。無言で突然肩を叩く、腕を握る等、体に触れることは避けましょう。相手の緊張を高めてしまいます。大事なのは、心配している、気にかけているのは、親の方のあなたです、というメッセージです。
実際は、怒鳴られている子どものケアも重要ですが、「そこまでひどく怒らなくてもいいでしょう。子どもが可哀そうでしょう。子どもの気持ちを考えて」という言葉は、感情が高ぶっている状態では冷静に受け取れません。このような場面では、子どもの味方として親を責める構図にならないほうが私はいいように思います。
「あ、(知っている)さんが声をかけてきた」と意識が向くことで、親自身が自分だけではストップさせきれないでいた不機嫌な行動にピリオドを打てるきっかけになりえます。知人・友人に見られて恥ずかしい想いが一時的な抑止力になるかもしれません。「どうしたの?」と尋ねられて、「さんざん駄目だと言っているのに、この子が言うこと聞かなくて」等、話してくれるかと思います。「そうだよね、疲れているときに外出先で言う事聴いてくれないと、情けなくなるものね。」など共感してもらえると、恥ずかしい気持ちから安堵する気持ちへと親も変わります。困っている状態は親も子も両方なのでしょう。
今ご紹介した流れが唯一の正解ではもちろんありませんが、少しでも具体的なイメージや見通しができると嬉しいです。そして、今回の場面を、不機嫌な子どもに親がどう声をかけるか、親子関係にも当てはめてみても悪くないと思います。今、関わるか、関わらないでいるかの選択は、その場の咄嗟の判断です。が、経験値の集積から得た勘は、的を射ていることも少なくないです。
佐賀市こども・子育て支援専門アドバイザー 田口香津子