子育て応援コラム「アタッチメント」 No.23 令和7年1月号
2025年、令和7年が始まりました。皆様、いかがお過ごしでしょうか?
どうしても世間一般は、クリスマスは賑やか、お正月はめでたいというムードになりますよね。ですが、必ず、そうでない『状態(状況)』を生きている方々もおられます。私自身も、昨年末に体調不良が続き、年末にコロナと診断され、引きこもり状態にいましたから、周囲とのギャップを一層強く感じ、流石に、めでたい気持ちとは程遠かったです。
私たちは、自分だけではコントロールできない世界の中で、快と不快、喜びと悲しみ、日向と陰、愛と孤独などの、両極を揺れ動く、多様な『状態』を生きているわけです。それぞれの人生の軌跡を辿ってみれば、その揺れの波が穏やかな場合も、ある時期から急激に激しくなる場合も、ずっと負の極から離れられない場合など様々でしょう。
ここで、私がお伝えしたいことは、ふたつあります。例えば、あなたが、子どもを怒鳴りまくっている人を見たとします。一つ目にお伝えしたいこと。あなたは、その人のことを、「怒鳴る人」、「攻撃的な性格」と捉えるかもしれません。それよりも、『今、怒鳴らずにはいられない状態』と捉えてみませんか。
そうすることで、その人のイメージを固定化しないで済みます。その人にも、過去や未来に『怒鳴らなくてもいい状態』を持っている可能性を意識できます。人は、『状態』を変えることで、変化・成長できる存在だということを再認識できます。
二つ目にお伝えしたいこと。その人の『状態』は、その人の言動だけで完結しておらず、周囲の人々が関与しているということです。
たまたま同じ電車の車両で、スーパーのレジで、先ほどの親子を見かけたという場合を考えてみましょう。周囲の人々の、知らない素振りで足早に離れる、眉をひそめてじろじろ見ているなどの姿も想像がつきます。人の目のある場所で子どもに恥をかかされた気分で、なおさら余計に感情的になっている親と多くの人の目に晒されて誰も関わろうとしない空気を味わう子ども。実は、こんな場面で、どう関わっていいか周囲も困惑しているのです。ですが、できるだけ親子と無関係でいたいと思っている周囲の人の態度が、知らず知らずに、親子の『状態』を悪化させている可能性もあると思うのです。
かといって、「大丈夫ですか?子どもさんのことで困っておられるみたいですけど」、「腹立ちますよね。私も子どもに手を焼く気持ち、わかります。」こんな風に、なかなか、声かけるのは難しいですし、相手の方を知らないので、どう反応されるか、うまくいくとは限りません。
良くも悪くも、私たちは、周囲の人間として、その人の『状態』に小さな変化を生み出すことができる存在ですし、同時に、周囲の人間の態度から、良くも悪くも影響を受け、『状態』を変化させる存在です。できるだけ、プラスの影響をもたらす存在になりたいものです。
見知らぬ人に声をかけることは簡単にはできないかもしれませんが、友人や知人など、顔見知りの関係の人には、その人の『状態』に合わせた理解の仕方や声かけの工夫はできるかもしれません。来月号には、その辺りを詳しくお話しできるといいなと思います。
さて、最後に嬉しかった出来事を記しておきたいと思います。20年以上も前に私の授業を受けていた教え子と子育てサロンで再会しました。その教え子は、サロン担当者として多くの保護者の支え手になっています。その教え子が話してくれたこと。「田口先生が子育ての大変さを話されて泣きだされた授業を覚えています。え?いつも明るい先生がと驚いて、その時は実感なく聞いていましたが、卒業後、自分が子育てをして同じように苦しかった時、何度も、あの時の先生を思い出してきました。」弱さを曝け出した不甲斐ない姿が、彼女の人生の小さな支えになっていたことを知りました。弱さは人とつながる力を持つと改めて思えた出来事です。
こども・子育て支援専門アドバイザー 田口香津子