子育て応援コラム「アタッチメント」 No.19 令和6年9月号
自己肯定感という言葉を、最近よく目や耳にしませんか?たとえば、「日本の子どもたちは、自己肯定感が低い」、「自己肯定感を育てるためにどうしたらいいか」などのフレーズです。私も、「自信」と何が違うのか、「自尊感情」、「自己効力感」、「自己有用感」など似た言葉と何が違うのかが、気になっていました。今回のコラムは、その辺りをテーマに書き綴ってみたいと思います。
厳密な区別なく、ほぼ同じように使われている言葉達。そのうち、自己有用感 (self-usefulness)は、「自分は人の役に立っている」という意味で、他者の存在が前提にあるものです。自己効力感(self-efficacy)とは、「自分ならできる、うまくいく」というもので、それだけの『能力』が自分にあるという意味です。自信(self-confidence )は、「自分の能力や価値を信じる」という意味ですが、自他の評価がその根拠になる為、自己評価や他者評価が変われば、自信を「持ったり」、「失くしたり」と変動してしまいます。プライド(pride)は、日本語の訳では、自尊心・誇りという意味ですが、会話の中では、「あの人のプライドの高さには困ったもの」というように、虚勢・傲慢の意味で使われることも多いようです。
では、「自己肯定感(self-affirmation)」とはどんな意味なのでしょうか。どうやら、成功する、成果を出すという『能力』には基づいていないようです。一旦獲得すれば、他者からの評価に左右されるものでもなさそうです。無条件に「自分には価値がある」と認めることができる、ありのままの自分の存在をOKとする感覚。たとえ、人の役に立たなくても、他者から称賛されなくても、秀でた能力がなくても、失敗をしても、欠点があるとわかっても、自分が好きだと一貫して持ち続けることができるもの。これは、もう山あり谷ありの人生を生き抜く上で、無敵ではありませんか。
ちなみに、自尊感情(self-esteem)は、他者との比較なしに 「自分の存在には価値がある」というもので、自己肯定感と同義と捉えることができそうです。
これは、生まれつきのものなのでしょうか?そうではありません。自己肯定感も、まずは、周囲からのプラスのフィードバックがなければ始まりません。他者からの承認は必須です。しかし、他者との比較で優れているかどうかの承認でもなく、成功したかという結果への承認でもないようです。つまり、何を成し得たかという「DO=行為」の次元ではないようです。
自分自身のありのままの姿を見守って、肯定的に応答する他者がいてくれること。うまくできなくて、しばらくやる気をなくし、不機嫌であったとしても、やがて気を取り直し、再度挑戦しようとしている姿を見てくれて、あるいは、失敗しようと何度も何度も同じことを繰り返している姿を見てくれて、それでいいよと、「BE=存在」の次元を受け入れてもらえること。自己肯定感の原点はそこにあります。
あ、赤ちゃんってそんな存在かもしれません。かといって、いつまでも赤ちゃん扱いして良いわけではありませんよね。子どもが自己肯定感を獲得できるために、どんなふうに接したらいいのか、そもそも親自身が自己肯定感を持てていないのに、それが可能なのか、など疑問もありますよね。次回は、そこをテーマに一緒に考えていきたいですね。
こども・子育て支援専門アドバイザー 田口香津子